【映画感想】「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

公式サイト:映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』公式サイト

2023年10月20日公開。監督はマーティン・スコセッシ、出演はレオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ、リリー・グラッドストーン、ジェシー・プレモンスなど。

原作はデヴィッド・グランの『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』。

実話ベースの話となっています。事前知識としてナショナルジオグラフィックのこちらの記事を読むとより理解がしやすいです。どちらも同じ記事です。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7d8d8db5a9a204ec63000ba5ee0893cb83bb97ad?page=1

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/101700530/

予告編

感想

観ていてこんなに苦しい映画は初めて。話が進めば進むほどどこに向けたらいいのかわからない感情が湧いてきてとにかく苦しかった。これが実話であるということとたった100年前の出来事ということに衝撃を受けた。とてもじゃないが現代では到底理解することのできないえげつない行為の数々でとにかく心が苦しかった。

事前知識として本作は1920年代オクラホマ州で実際におきた連続殺人事件が基になっています。先住民であるオセージ族はアメリカ政府によりかつての故郷を追われ別の土地へ移り住みました。そこでたまたま石油が発掘され、オセージ族は大富豪となりました。ところがアメリカ政府はオセージ族にお金の管理能力がないと勝手に判断し、同じ地域の白人に財務管理をさせる後見人制度を義務付けました。この後見人制度で、お金を自由に使えない、後見人による資金の着服ともうめちゃくちゃです。さらに追い打ちをかけるように結婚することで、オセージ族でなくても資産を相続できるようになっていました。これにより、オセージ族の妻や夫が亡くなった際には資産を相続出来てしまうということです。ここまでくればあとはご察しの通り、オセージ族の不審死が多発しました。

こんなに不審死が多発してれば捜査すればすぐ終わらんか?と思いますが、捜査はまともに行われていません。だってこの制度を作ったのは政府側の保安官なので、当然やりたがりません。そこで、オセージ族たちはアメリカ政府まで直談判して多額のお金を寄付することで、やっとまともな捜査をしてもらえるようになりました。ここで生まれたのがFBIである、という大まかなストーリーです。

このストーリー部分だけ読んでもかなり胸糞の悪い事件です。当時の強烈な先住民差別意識を物語るような内容ですし、この事件があまり大っぴらになっていなかったというのが衝撃です。原作の出版は2017年なのでこのあたりまで、忘れ去られてた歴史です。先住民がテーマの作品は何本か観たことがありますが、どの作品でも共通して思うのが、なぜ最初から住んでいた人たちがこんなに虐げられなければならないのか、ただただそう思います。

一旦映画のほうの感想に移りましょう。やはりレオナルドディカプリオは素晴らしい演技でした。今作ではどちらかというと白人サイドの役なので、善か悪かでいうと悪側の役です。こんなに観ていて、怒りやイライラが湧いてくる主人公は初めてかもしれません。一言でいうと、人生の二択をひたすら間違えまくってます。なにか考えがあってそういう行動をしているのかと思ったりもするんですが、一番最後のとある質問の答えで、あ!この人って純粋にこうなんだ!と納得してしまいました。

ロバート・デ・ニーロもやはり大ベテランの演技が素晴らしかったです。観てる側からしたらなんかこいつうさんくせーと思うんですが、実際あの世界に入ってみると結構作中と同じようにやられちゃうと思います。罪悪感というかそういったものは一切存在しなくて、まるで息をするような感じで進めていくので、静かな怖さを感じました。

最初は原作のタイトルから最終的にFBI生まれたよ凄いでしょ!みたいな流れになるのかと思いきや、全く違う感じだったのでそこはすごくよかったです。メインはオセージ族女性と白人男性の夫婦になっているので、どちらかというと事件に巻き込まれた、巻き込んだ側の視点になっていました。一番の最後のシーンでは、なんというかこの事件の伝えられ方に対する強烈なアンチテーゼのように感じました。これまでとは全く空気感の違う感じでまるで娯楽の一つとして消費されていく、そんな雰囲気を感じました。

作品としてはかなり重めの内容で強烈な差別意識や嫉妬など現代にも当てはまる問題について大きく考えさせられる作品だと思います。ただ、僕が感じたレオナルド。ディカプリオへの感情をぜひ皆さんにも味わってほしいです。

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