【映画感想】「神々の山領」
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2022年7月8日公開。原作は小説「神々の山領」ですが、本作品は谷口ジロー氏作画の漫画版をもとに製作されています。監督はパトリック・アンベール、日本語版においては主人公である深町誠を堀内賢雄、羽生丈二を大塚明夫が担当しています。フランスで制作されたアニメーション映画です。
もともと谷口ジロー氏はフランスで人気が高く、2011年にフランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエ章を授与されています。本作の製作チームのもとを二度訪れ、作画やストーリーの確認に携わっていたようです。
「登山家マロリーがエベレスト初登頂を成し遂げたかもしれない」という実際にある未解決の謎。カメラマンの深町誠はネパールで、その謎が解明されるかもしれないあるカメラの情報を聞きます。同時に何年も前に消息を絶った孤高のクライマー・羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に去っていく姿を目撃したところから物語は動き始めます。
感想
「なぜ山に登るのか?」という問いかけをしたときに、「そこに山があるから」という回答は世界で一番有名だろう。この言葉はイギリスの登山家、ジョージ・マロリーが残した。この言葉の意味が本作品にすべて詰め込まれている。文字や絵でもなく映像から感じてほしい。
本作品のスタートとしては、あらすじにもある通り登山家マロリーの実際にある未解決の謎からスタートします。この謎を解明する手掛かりは、遺品のカメラだけ。カメラは羽生丈二という登山家が持ち去ってしまったので、羽生丈二の行方を追うという展開になっていきます。最初観ているうちは、マロリーの謎はどうなるんだろうと思ってみていましたが、観終わるとそんなことはどうでもよくなっていました。
羽生丈二を追うために彼の半生を追っていく展開になっています。現代と羽生丈二の回想を行き来しながら物語は進んでいきます。羽生丈二の半生を通じて、彼の性格などはもちろんですが登山家の苦悩や葛藤なども知っていくことになります。つらい部分もありながら、この男を追えば追うほどのめりこんでいくそんな気持ちになりました。
登山シーンの緊張感などはとてもリアルに感じました。雪山の冷たさや断崖絶壁をピッケルで登っていく感覚を映像から感じることができました。思わず手に力が入り、歯を食いしばってしまいました。山の危険さもしっかり表現されており、アニメーションだからこそできる表現で、本作品がアニメ映画である必要性をしっかり感じ取れました。
作中ではテーマである「なぜ○○するのか」という問いかけが度々出てきます。彼らを突き動かす何かは、形をとらなくとも熱い煮えたぎる何かであることがしっかり伝わってきます。この何かが伝わってくるからこそ、彼らの息遣いや動きなどから目を離すことができません。そしてやはり観ている人たちにも、映像を通じて「なぜ○○するのか」と問いかけてきます。
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