【映画感想】「マイ・エレメント」
公式サイト:ディズニー&ピクサー最新作『マイ・エレメント』|映画
2023年8月4日公開。製作はウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、ピクサー・アニメーション・スタジオのいつものコンビで、ピクサーが製作する27作品目の長編映画のようです。監督はピーター・ソーン。
今時の映画では珍しく短編映画「カールじいさんのデート」が同時上映されました。カールの英語版・日本語版の声優は既に亡くなっていますが、亡くなる前に収録が完了していたため、本短編作品は英語版声優:エド・アズナーと日本語版声優:飯塚昭三、最後のカールじいさんです。
感想
最初に驚いたのが舞台である「エレメント・シティ」の表現だ。エレメントたちはファンタジーの存在だが、人間の生活と同じように衣食住すべてが一切の隙が無く表現されている。物語が終わった後も、この世界観の日常をただただ眺めてみたいそんな気持ちにさせられた。物語も絶対的なエレメントのルールを歪めることなく、最後にはどこか「やさしい気持ち」になれた。
本作品でやはり一番魅力的なのは、舞台である「エレメント・シティ」だと思います。個人的には、ファンタジー作品で最も重要なのは「生活感」だと思っていますが、「生活感」の表現レベルがとにかく高いです。なんなら街の構造に矛盾が出ないように、最初に暮らし始めたのはどのエレメントで~という歴史部分までさらっとではありますが説明されています。
「生活感」について、最初に驚いたのは火のエレメントの食生活です。物語の中で主人公たちは火のエレメント向けの雑貨店を営業しているわけですが、そこでおやつとして売られてるのは、木を火でぎゅっと圧縮して作ったナッツ型の木炭なんですね。さらに赤ん坊がミルク代わりとして飲んでいるのはまさかのオイルライターです。文面だけ見るとかなりおかしく見えますが、火の食事としては全く違和感がありません。我々が火を強くしたり、維持するのに使うのは木炭や石油などです。そう考えると矛盾がありません。
続いて魅力的なのは、この世界における化学反応の部分です。個人的に一番よかったのは、ガラスを使った表現ですね。ガラスが割れてしまうシーンがあるんですが、ここで割れたガラスを集めるということは誰でもすると思います。ここから火のエレメントだとどうするか?そう、もう一度ガラスを溶かして元の形に戻して修復するんですね。これは最初観たとき「おお!」と思いました。あとは全体として分かりやすかったのは、水のエレメントウェイドと火のエレメントエンバーが一緒にいるときに、ウェイドの体がキラキラしているんです。現実でも水に光が当たるとキラキラして見えますよね。そのあたりがぬかりなく表現されていました。
物語のキーワードとしては「多様性」や「移民」などがしっくりくると思いました。「移民」についてはすごくわかりやすいです。主人公たちはまさにそういう行動をしているので見たまんまです。ただ、エレメント・シティの成り立ちを考えるとかなり苦しいものであることが分かります。最初に説明されますが、水→土→風の順番でエレメント・シティに来ているわけです。となると、整備も追いついてないし、しかも最悪なことに一番相性が悪い水が暮らしやすい環境が出来上がってしまってます。この辛い部分があるからこそ物語がより際立っているように見えました。
「多様性」については、視覚的に絶対的な相性差が分かりやすくなっているからこそ、お互いを尊重することの重要さなどが際立って見えました。特に別エレメント同士の触れ合いは本来であれば心の中で、譲歩したりする部分が視覚的に表現されていていいなと思いました。
子供向け、家族向けに見えますが細かい部分を観ていくと、エレメンタルたちの切なさや文化などが表現されていて大人でも楽しめる作品です。
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