【映画感想】「ブレードランナー ファイナルカット」

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オリジナル版は1982年7月3日公開。公開後はインターナショナル版やディレクターズ・カット版など様々なバージョンが登場しています。今回のファイナル・カットは公開25周年を記念し、2007年に登場したものです。

監督はリドリー・スコット、主演はハリソン・フォードです。原作はフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」ですが、設定や登場人物、物語の展開、結末などが異なるため世界観を借りている原案に使い形となっています。本作のタイトルである「ブレードランナー」や作中で登場する「レプリカント」は原作にはない映画オリジナルの用語になっています。

2019年のロサンゼルスを舞台に、人造人間「レプリカント」と呼ばれる存在を追跡・処分する警察官「ブレードランナー」という人たちがいるという世界観です。本作では、元ブレードランナーのリック・デッカードがレプリカントたちが反乱を起こし地球に逃れてきたことを知り、彼らを退治する任務を与えられたところから始まります。

予告編

感想

「サイバーパンク」というジャンルを代表する作品。作中の世界観や空気感はどこか懐かしさを感じつつも近未来であることも感じてすごく魅力的。同時にストーリーではレプリカントについて知ることで、人間の在り方とはなんなのかを問いかけてくる。

世界観はとても良い作品だといえます。近未来を描く作品は主に2種類に分けれらてると思っています。ひとつは、明るくて現実離れして超技術があふれてる作品。ふたつめは、すごい技術は出てくるんですがどこか現実的で退廃しているような作品。本作品は後者に当たる作品です。車は空を飛んだり、アンドロイド的なのがいたりと未来技術にあふれているのですが、雰囲気的には退廃しています。ネオンなんかがあふれていてどこかアングラのような雰囲気がすごく良いです。まさに「サイバーパンク」そのものです。しかし、なぜこういった世界観には漢字や日本語、日本文化などがしっくりくるんでしょうか?どちらかというと、近未来とは反対の文化ぽいイメージなのですが…不思議ですね。

作品全体としては、セリフは少な目でバンバン説明が入ってという感じではなくて、映像で見せていくハードボイルドな印象を受けました。しかしながら、主人公デッカードの心情が分かりづらいというところはなく、表情や動きで孤独さや苦悩を感じ取れることができ、ハリソン・フォードの演技が光っていると思います。反対にレプリカント側は、心情的な部分は言葉に出しているような印象でした。動きの部分では目が印象的に映りました。作中で人間とレプリカントを区別する「フォークト=カンプフ検査」というのがあるのですが、この検査でも特に目の動きを重点的に見ています。見た目は同じなのですが、この目の部分で大きく差別化されてるように感じました。

ストーリーとしては、ロボットとかアンドロイドものによくある感情が芽生えて人間に対して反旗を翻すというようなよくありがちなストーリーです。よくありがちなんですが、本作のスタート地点は、反旗を翻されたんで4年という寿命をレプリカントに持たせたんですが、それでも脱走するレプリカントたちがいますよ、というところからです。反乱に対して対応策を打ち終わったあとなんですね。よくある共存していきましょうというのは諦めて、「感情を持ったり、反乱を起こされる前に機能停止してしまえばよくね?それでも脱走とかするやついるかもしれないからそういうやつを抹殺する仕事を作ればいいじゃん。」という解決をしています。共存とかはありえなくて、人が主人であり続けるための解決方法なのかなと思います。

メインで出てくるレプリカントたちは全員とても人間らしい存在であると思います。既に感情を持っている存在で、寿命が4年しかないことも知っています。なので「もっと生きたい」と純粋に思っているわけです。この思いがとても人間らしいですよね。生きたいってやっぱり誰しもが根底に思っている考えだと思うので、この純粋な思いがレプリカントたちをより人間らしくしているのかなと思いました。

本作のテーマである「人間らしさ」という哲学的な問いについては、正解はないと思います。哲学的なテーマで難しい感じはありますが、世界観や空気感は素晴らしいのでこの世界に浸るために定期的に見たくなるような作品だなぁと思いました。

ブレードランナー ファイナル・カット(字幕版)