【映画感想】「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」

2023年1月24日

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タイトルにもある通り、「パシフィック・リム(2013)」、「シェイプ・オブ・ウォーター(2017)」、メディアで見るたびだんだんでかくなってること(個人的な感想)でおなじみのギレルモ・デル・トロとマーク・グスタフソンがタッグを組んだ共同監督の作品です。題材としては、嘘をつくとお鼻が長くなることでおなじみの「ピノッキオの冒険」をベースにギレルモ・デル・トロならではの解釈がされています。予告編を観てもらえればわかりますが、全編人形を使用したストップ・モーションアニメとなっています。

予告編

感想

この作品を観て率直に頭がおかしい(誉め言葉)と思いました。

ストーリーについては、原作「ピノッキオの冒険」の大筋をなぞってはいますが、展開や世界設定、登場キャラクターが異なります。大きく異なるのは世界設定ですね。本作は第1次大戦あたりの時代をメインに描いています。飛行機などが登場しますが、ピノッキオが異形の者と思われるようなそんな世界設定になっています。展開については、原作にちょっぴりダークな要素を加えたテイストとなっていますが、家族でも観れるような内容になっています。また、デルトロ監督が得意としている「異形の者が人間性を求める」というテーマもしっかり描かれています。原作のキャラクターといえば、しゃべる動物などが多くファンタジー要素が強いですが、本作は人間が多く、ファンタジー要素としては精霊+一部の動物たちという感じになっています。

映像については、最初に見たときはフルCGかと見間違うくらいにすべての動きが滑らかでびっくりしました。動きの細かいところまでこだわりぬいていることがしっかり伝わりました。メイキング映像でも語られていましたが、「ミス」を表現していること、物理表現までしっかり表現していることでしっかり世界の中でキャラクターが生きています。「ミス」の表現については、例えば人が扉を開けた際にきれいに元の閉じた形に戻らないと自分でもう一回閉めなおしますよね?この動きを本作ではしっかり描いています。また物理表現については、例としてカーテンを閉めたときにキレイにピタッと閉まるわけではなくて、ちょっと戻りますよね?この戻りの部分もしっかり表現しています。上記で挙げた2つの例に関して、正直必要ではない表現ですよね。扉を開けた後はきれいに閉じるように描写すればいいし、カーテンも端っこでびしっと止まるようにすればモーションも減って楽になります。この当たり前を表現することで、人形を動かすストップ・モーションアニメですが世界の中でキャラクターが生活していると実感することができます。

主人公であるピノッキオは原作の通り自由奔放で自分勝手でどうしようもない感じで、作ったゼペット爺さんからは「息子じゃない」とぶちぎれられますが、ストーリーが進むにつれて持ち前の個性で周りのキャラクターたちに様々な影響を与えていきます。作中で「与えた分だけ、与えられる」というようなセリフが登場しますが、まさにそれでいろんな人に与えた結果、人間らしさのようなものがしっかり芽生えていきます。ゼペット爺さんも最初は亡くなった息子カルノの代わりがピノッキオと思っていた節があるのかもしれませんが、後半は1人の息子として思い接することでありのままのピノッキオを受け入れたのかなと思います。

より個性が重要視されるようになってきた現代にふさわしい作品だと思います。ストーリーだけでなく映像についても何度も観たくなるような作品だと思いますので、ぜひ観てみてください。視聴後はこちらのメイキングもぜひご覧ください。あらゆるこだわりが凝縮されているので、もう一度観たくなります。

ぜひ劇中で使った人形の展示会をやってほしいです!