第95回アカデミー賞授賞式の感想
2023年3月13日 午前9:00(日本時間)よりカリフォルニア州ロサンゼルス市ハリウッドのドルビー・シアターにて授賞式が始まりました。
リアルタイムでは観れなかったので、WOWOWのアーカイブ配信を視聴しました。(約3時間)
今回の注目作品は「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」一択でしょう。11部門にノミネートされており、ゴールデングローブ賞などアカデミー賞以外でも多くの賞を受賞していました。また、主演のミシェル・ヨーやキー・ホイ・クァンが本作に出演するまでのドラマ性なども話題になっていました。
受賞結果はこちら。前評判通り、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が作品賞さらには監督、脚本、主演女優、助演男優など7部門を受賞しました。
気に入ったスピーチ
賞を受賞すると、受賞者が登壇してスピーチをします。その中で個人的に気に入ったものを紹介します。
長編アニメーション賞:「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」
アニメーションは“シネマ”です。ジャンルの一つではない。アニメーションは次のステップに進む準備ができています。アニメーションのことをいつだって話題にしてほしい。
この芸術は、長い間、商業的、産業的、そして子ども向けとみなされていました。アニメは美しく、複雑で、成熟した表現豊かな芸術の形なのです。ですから、この受賞は将来の助けになり、それはコミュニティとして前進することにもつながります。アニメーションを産業として、また芸術として存続させることが重要です。そして、メキシコでストップモーション教室を開催するための資金を提供することが、私の願いであり、コミットメントです。メキシコやラテンアメリカのコミュニティで、ストップモーションという最も民主的なアニメーションの形式を推し進めるために、より多くの映画を提供することができるのです。ほかのアニメーションは、難しすぎたり、高価すぎたりします。しかし、子どもたちは自分の部屋の壁にカメラを置いて、ストップモーションでアニメーションを作ることができるのです。
ギレルモ・デル・トロ(第95回アカデミー賞)
作品を観た後に聞くと、このスピーチの重みがよく感じられます。アニメという芸術を今後も進化させていきたい、後世に伝えていきたいという強い思いが感じられて好きでした。
主題歌賞:“Naatu Naatu”「RRR」
アカデミーの皆さん、ありがとうございます。
M・M・キーラバーニ(作曲)(第95回アカデミー賞)
「カーペンターズ」を聞いて育った私が、いまこうしてオスカー像を手にしています。
私の心にあるのはひとつの願い事、そしてS・S・ラージャマウリと我が家族。「RRR」はすべてのインド人の誇りとなるために受賞する運命にあり、私を世界の頂点に立たせたのだ。
ありがとうございます。願いが叶いました。愛してます、ありがとう。
文章だけ読んでもかっこいいと思えますが、この文章はそれだけではないです。2行目のカーペンターズを聞いてというところから「トップ・オブ・ザ・ワールド」のメロディに乗せてスピーチをしています。主題歌賞らしいスピーチですごくきれいでした。私を世界の頂点に立たせた、まさしくトップ・オブ・ザ・ワールドです。
主演男優賞:ブレンダン・フレイザー「ザ・ホエール」
これがマルチバースにいる感覚なんだろうね。
この栄誉を授けてくれたアカデミーと、骨太な映画をつくり上げてくれたA24に感謝します。
ダーレン・アロノフスキーが私にクリエイティブな命綱を投げかけ、「ザ・ホエール」という船に乗せてくれたことに感謝しています。この物語を書き上げたサミュエル・D・ハンターは私たちの灯台でもあります。あなたたちは、クジラのような大きな心をむき出しにして、魂の内面を私たちに見せてくれましたが、それは誰もができることではありません。この部門で皆さんと一緒に自分の名前を挙げられることを光栄に思います。ホン・チャウの才能の奥深さのなかで泳げるのは、クジラのほかにいないでしょう。
30年前にこの仕事を始め、物事は簡単には進まず、受け入れがたい事態にも陥りました。だから、このように認められたことに、ただただ感謝しています。私の共演者たちがいなければ成し遂げられませんでした。まるで私は潜水調査をしているようで、水面まで続く気泡のつらなりを、私の人生の一部である、まるで息子のような人たちが見守り続けてくれました。すべての皆さんに心から感謝します。よい夜を。
ブレンダン・フレイザー(第95回アカデミー賞)
A24の同作品を絡めつつ、共演者たちへの感謝、自身の生い立ちなどをクジラと海に例えたスピーチがとても美しかったです。作品タイトルにうまく絡めているのが好きでした。
助演男優賞:キー・ホイ・クァン
84歳になる母は家で放送を見ています。母さん!オスカーをとったよ!!
私の旅は船から始まり、難民キャンプで1年過ごし、いろいろなことがあってハリウッドのこの大舞台に立つことができました。このような話は映画のなかだけのことだと皆が言うでしょう。いま自分の身に起こっていることが信じられません。これこそがアメリカンドリームです!
アカデミーの皆さん、ありがとうございます。自分を犠牲にして私をここに導いてくれた母に感謝しています。そして自分を大切にするようにと毎日電話してくれた弟にも。常に私を支えてくれたケンもありがとう。A24、ダニエルズ、ジョナサン、ジェイミー、ミシェル、そして私の一生の“グーニーズ”の友ジェフ・コーエン。20年もの間、毎月、毎年、「いつか私の時代が来る」と言い続けてくれた妻のエコーのおかげで私の人生があります。
夢は信じなければならないものです。私はあきらめかけていました。これを見ているすべての皆さん、どうか夢を持ち続けてください!
カムバックを歓迎してくださってありがとうございます。愛しています。本当にありがとう。
キー・ホイ・クァン(第95回アカデミー賞)
「エブエブ」の受賞スピーチはすべて素晴らしいですが、一つだけ挙げるならこのスピーチだと思います。思わず感動してしまいました。まさしくアメリカンドリームが詰まっている、素敵なスピーチで僕は好きです。
感想
パフォーマンスでは、「Naatu Naatu」のダンスが生で披露されたり、本来は歌うはずのなかったレディ・ガガがドレスではなくすごいカジュアルな格好で「Hold My Hand」披露していたのも良かったです。ほかには、短編実写映画賞の「An Irish Goodbye(原題)」で受賞者がちょうど誕生日だということで、バースデーソングで祝われていたりしました。
個人的にはメイクアップ&ヘアスタイリング賞がかなりの衝撃でした。受賞時にメイクの映像が流れるんですが、主演のブレンダン・フレイザーどうやったらああなるのか全く分かりませんでした。どうやら総デジタル技術による特殊メイクを開発したようです。
今回推していたのは、「西部戦線異状なし」と「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」の2作品でした。「エブエブ」も観ていたら推していたかもしれませんが、まだ観てないので残念ながらという感じです。両方ともNetflixですが、たまたまそうなっただけです。ダントツで響いた作品がこの2つです。トップガンも素晴らしいですが、やはり続編という部分が結構きついですよね。個人的にはできるだけ単体で面白いもののほうがいいと思っているので、最近のMCUなどは特に評価しづらいです。
「西部戦線異状なし」は戦争や兵士をただただありのままに描いているところが好きでした。だいたいヒーローになりがちですが、何にもないただの1兵士です。これによって、戦争の意味や無益さを投げつけられます。
「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」は一目見ただけで虜になりました。すべて人形なのにたしかに魂が宿っていて、街が人が生きている、そんな表現に心を打たれました。
結果的に2作品とも評価されてよかったです。
今回の結果で面白い作品やすごい俳優などがバイアスなしに評価されるような、アカデミー賞の本来あるべき姿に戻りつつあるのかなと思います。よく、これまでは非白人が○%しか受賞していないみたいな統計を出してるのがあると思うんですが、個人的には、だから何?という感じなんですよね。じゃあその統計に従ってバランスとるために今回はこの人種の人を~とか評価し始めたら、もうめちゃくちゃです。どこの人だからとかどこの国の作品だからというのは抜きにして、評価されるようになると良いなと思いました。アカデミー賞側も会員を増やしたりして、極端な偏りがないように取り組んでいたようです。今回はその結果が出始めたのかなと思います。
あと、アナ・デ・アルマスめっちゃきれいでした。ナイブズアウトとブレードランナー2049で観てからハマってます。
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