【映画感想】「ラストナイト・イン・ソーホー」

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※作品中、性的暴行に関する描写、光の激しい明滅表現が含まれています。鑑賞の際にはご注意ください。

2021年公開の映画で監督はエドガー・ライト、主演はトーマシン・マッケンジー、アニャ・テイラー=ジョイのW主演です。また、2020年9月に死去したダイアナ・リグと2020年10月に死去したマーガレット・ノーランが最後に出演した映画でもあります。2名とも1960年代の「007」シリーズにおいて、ボンドガールを演じています。まさに1960年代を代表する2名ともいえるので、現代と1960年代を行き来する本作にぴったりの配役だと思います。

予告編

感想

現在と過去、現実と夢、憧れと真実、エロイーズとサンディ、鏡越しに対となる要素が何層にも重なったこの作品の世界を鏡の狭間から観る感覚に陥ります。そんな鏡の狭間から観る本作品の映像に魅せられます。時代が違う鮮やかでまぶしい同じ場所で夢を追い続ける二人の結末をぜひ見届けてください。

ジャンルとしてはタイムリープ・サイコ・ホラーとなっているようです。(公式サイトより)
作品全体を通して、過去の世界である1960年代はとても魅力的に描かれています。照明、音楽は特に魅力的でこの世界を最初に観た人は1960年代は素晴らしいと言いたくなります。そのくらい1960年代に対する愛情が詰まっています。輝かしい憧れの一方でこの時代に囚われた亡霊たちは、真実を明らかにしていきます。この対比は、昔はよかった、あの時代は素晴らしかったという過去を賛美する懐古厨たちに警鐘を鳴らしているように映ります。

ただ単に過去を賛美するな、というわけではありません。1960年代を追体験した現代の主人公エロイーズに良い影響を与えています。一方で過去の亡霊たちが告げる真実は悪い部分としてエロイーズの精神を蝕んでいきます。エロイーズに影響を及ぼしている描写は、美しさと同じくらい怖さを表現しています。この描写から、過去を良い部分だけを持ち上げて賛美するのではなく、悪い部分にも目を向けないといけない、というメッセージを感じます。特にネット社会になった現代では、人間は見たいものしか見ないというものが顕著になってきていると思うので、まさに現代では特に刺さるようなメッセージだと思います。

冒頭でも記載しましたが、一部性的暴行に関する描写と光の激しい明滅表現があるので鑑賞する際はお気を付けください。
ここまで鮮やかでまぶしく魅力的なホラー作品は初めて観ました。ホラーといえば怖さにおびえながらというのがありますが本作は先が気になって仕方ありません。ぜひソーホーで起きた事件の真実を見届けてください。

※2023年2月10日現在、AmazonPrime特典で鑑賞できます。
ラストナイト・イン・ソーホー (字幕版)
ラストナイト・イン・ソーホー (吹替版)