【映画感想】「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
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2023年3月3日公開。監督はダニエル・クワン、ダニエル・シャイナートの通称「ダニエルズ」、出演はミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェニー・スレイト、ハリー・シャム・ジュニア、ジェームズ・ホン、ジェイミー・リー・カーティス。製作には「アベンジャーズ/エンドゲーム」の監督であるアンソニー・ルッソとジョー・ルッソのルッソ兄弟が参加しています。
2022年度において最も注目を浴びた作品の一つと言っても過言はないでしょう。第95回アカデミー賞で10部門ノミネート、7部門受賞という驚異の記録をたたき出しました。IGNUSによる集計では史上最も多くの賞を獲得した作品となっています。(ソース:IGNJapanによる翻訳記事)
賞レースもそうですが、アカデミー賞受賞にいたるまでの出演俳優たちの物語にも注目されました。特にキー・ホイ・クァンは、まさにアメリカンドリーム。アカデミー賞のスピーチは少しほろりと来ました。
感想
一言で表すならカオス。こんなぶっ飛んだストーリーは、監督・脚本を務めたダニエルズにしか書けないのではないだろうか?頭の中に無限の可能性があると言わざるを得ない。近年スーパーヒーロー作品に取り入れられる、マルチバース(多元宇宙、並行宇宙)を題材にしている。ありえたかもしれない多数の可能性を見せられる楽しさがある反面、あの時こうしておけばというような今生きている世界に対する虚無感も描かれている。しかし、本作品はそんな後悔し続ける人生に対して一つの回答を示している。この作品を観た後、親切であり続けたいと思った。
本作品は、普通のおばさんが税金問題に苦しむという、家庭的なところからスタートしています。テーマでもあるマルチバースは、どこか遠いところの話というイメージを描きがちです。ですが、スタート地点が現実的な問題になっているのでというテーマを身近に感じることができます。マルチバースの設定の活かし方も面白いです。マルチバースの基本的な考え方として、人生の選択それぞれに別の宇宙が存在しているというような考え方です。本作品ではそんな別の宇宙の自分の能力を借りてくるわけですが、ここが面白いです。現実世界の行動と別の世界に飛ぶ力がリンクしていて、変な行動をすればするほどより強力な力を借りれるという設定です。主人公たちは世界を救うという使命を負っているので、強力な力を手にするために変な行動をしまくるわけです。それに対抗するため敵対勢力も同じように変な行動をしまくります。まさにカオスです。
出演俳優の方たちは皆さん素晴らしく、彼らのために作られたのではないかと思えるぐらいにはまり役でした。特に、キー・ホイ・クァンは一番のはまり役だと思います。すべてが自然でまるでこの役そのものなのではないかと思えるほどでした。特に中盤以降、セリフや言動が心をグッとつかんで離しませんでした。
マルチバースと聞くと空想の世界の話だと感じますが、まさに我々が使っているインターネット世界そのものだと思いました。インターネット上では、世界を救うヒーローになれたり、全く別の容姿、性格を手に入れたりできます。今まさに手元に広がる多数の可能性を見せられると現実世界から逃避したくなったり、虚無感を覚えたりします。本作品では、そんな現代社会に「現実世界もそんなに悪くないぜ」と伝えているようにも感じます。また現代社会における生き方を示しているようにも感じました。
ここまで感想を読むと説教臭いような印象を受けますが、アクションやコメディ要素、パロディなど面白い演出がたくさんあるので、だれでも楽しめる作品だと思います。A24というちょっとマニア向けな制作スタジオということで警戒しているかもしれませんが、だれでも楽しめる作品だと思います。僕は警戒しながら観ましたが楽しめました。
おまけ
パンフレット
パンフレットの中では、主人公のあり得たかもしれない可能性(高速で流れるあのシーン)の写真が載っているので一見の価値ありです。
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