【映画感想】「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」

公式サイト:ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー | 任天堂

2023年4月28日公開。任天堂のゲームソフト「スーパーマリオ」を原作としたアニメーション映画。任天堂とミニオンなどでおなじみのイルミネーションが共同製作しています。ユニバーサルスタジオジャパンにアトラクションがあることから、当然配給はユニバーサルピクチャーズです。

トレーラー

感想

全世界で恐らく知らない人はいない「スーパーマリオ」というブランドに対して、しっかり世界観とストーリーを構築している。ピーチ姫を助けるというもはや古典的な原作のストーリーを踏襲しつつ、しっかり現代でも楽しめるようなストーリーに仕上がっている。ゲーム作品の映像化として、ゲームの世界観を成立させつつ、要所のファンサービスも忘れないお手本のような作品。

まずこの映画を観てびっくりしたのが、ニューヨークから始まるということです。キノコ王国から始まると勝手に思ってました。ニューヨークから始まり、異世界であるキノコ王国に主人公であるマリオ達は移動します。最初はあれ?と思いましたが、考えてみるとこれはすごく自然です。原作ではピノキオやクリボーたちと一緒に明らかに人間であるマリオ達がいますが、いきなりこういう描写をしてしまうとかなり疑問が残ります。今回のように異世界からマリオ達がやってきたという展開にすることで、日常的なマリオ達とファンタジー的なキノピオ達をうまくミックスできています。

子供から大人まで家族向けをターゲットにしていることもあり、ストーリーもかなりわかりやすいです。要所要所でコメディチックなシーンも挟まれているので、クッパという分かりやすい悪を倒しに行くわけですが、どこか憎めない平和なストーリーが展開されている印象を受けました。コメディチックなシーンの見せ方は、かなりうまく感じたのでさすがはイルミネーションと思いました。また、全体を通して90分ほどで収まっているので、長すぎず短すぎずちょうどよく感じました。

マリオシリーズといえば、様々な派生作品が出ています。マリオカートなどマリオが登場する作品はたくさんあります。そうした中で、派生作品を活かしつつ、うまく一つの世界にまとめていてテーマパークのような作品に仕上がっていました。

音楽は主にマリオ作品のBGMが使われています。特にドンキーコング64のDKラップが使われていたのは個人的に良かったです。マリオ作品以外のBGMももちろん入っています。今回はユニバーサルミュージックの全力協力でいろんなアーティストの曲が流れて、より展開を盛り上げてくれます。このおかげで作品全体のテンポも良くなってると思います。

ゲーム原作特有の奇をてらった表現はないので素直に楽しめる作品だと思います。とりあえず気になってる人は観てみて損はないと思います。

今回のおまけはスタッフロールに記載されていたとある人に関してです。

おまけ

スタッフロールに元社長である故・岩田聡さんの名前があった。任天堂の株主総会はよくチェックしていたので、この名前があった理由にはピンときた。2015年6月26日(金)第75期定時株主総会の質疑応答でこんな内容があった。(このころはまだSwitchもNXという開発名称、DeNAと協業発表でスマートデバイス向け事業に力を入れ始めたころ。)
2015年6月26日(金)第75期 定時株主総会 質疑応答 – 4ページ目

キャラクターのフィギュアやグッズの展開をもっと大々的に行うつもりはないか。例えば、『ポケモン』のサトシ、ハルカ、カスミ、アイリス、セレナ、ヒカリなどのキャラクターは世界中で人気があり、こういうフィギュアやグッズを展開していけば、任天堂の収益にもなる。任天堂自身がフィギュアやグッズをつくらなくても、他社と提携していけば、新たな出会い、発展があるのではないか。

2015年6月26日(金)第75期 定時株主総会 質疑応答
Q11

わかりやすくいうと任天堂のキャラクターをもっと様々なグッズ販売などで展開していったらより収益につながるし、他社との連携でももっと良くなるんじゃないの?という質問に対して、このような回答をしている。

岩田:

 先ほどIP(知的財産)の活用というところでお話ししたことと回答が重なってしまいますが、任天堂はこれまで確かにグッズ展開を積極的にやってきたとは言い難いと思います。これからはもっと積極的に行っていくべきではないかということは社内で議論していますし、また、そういう展開を進めるためのワールドワイドで見た体制が任天堂にとっては非常に重要です。当社は海外売上比率の高い会社ですので、キャラクターのライセンス展開を考えるときにも日米欧の地域における連携をいろいろ考えています。展開方法はグッズだけにとどまらず、例えば映像での展開かもしれませんし、映画やテレビ番組かもしれません。どういう形態になるか分かりませんが、投資効率がよいライセンス展開だけでなく、任天堂でリスクをとってでも行うべきと判断したことについては、やっていきたいと思います。一方で、世の中には短期的に大ヒットしてグッズが山ほど出たけれども、ブームが去り、その後は在庫の山という終わり方をするものも決して少なくありません。それでは任天堂のキャラクターの価値にも傷がついてしまいますし、結果的に長期の企業価値の向上という点で決してプラスになりません。ですから、単に展開数を増やすというのではなく、本当に当社の長期的な価値の向上につながるかどうか適切に判断しつつ、今まで以上に積極的に展開していきたいというのが現在の考えです。

2015年6月26日(金)第75期 定時株主総会 質疑応答
A11

わかりやすく言うといろんな連携を考えていて、グッズだけにはとどまらず映像作品という展開も考えられますという回答をしている。

そうまさに今回出てきたのはこの例で示されていた映像作品である。今では映像作品だけではなく、アトラクションとしても展開されている。この頃から現在まで岩田社長時代から温めてきたものがきちんと世に出てきたこと、スタッフロールに名前が記載されていることは心にぐっと来た。そして改めてこの株主総会を調べると、岩田社長が亡くなる直前、最後の株主総会であり、さらに心が動かされた。

株主総会当時のレポート動画※投稿者は僕ではないです。

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