【映画感想】「鳩の撃退法」

公式サイト:映画『鳩の撃退法』公式サイト | 大ヒット上映中!

2021年8月27日公開。監督はタカハタ秀太で主演は藤原竜也。原作は直木賞作家・佐藤正午の「鳩の撃退法」です。(原作公式サイト:佐藤正午『鳩の撃退法』小学館文庫|小説丸)
原作と完全に同じではなく、登場人物の名前の変更や追加、エピソードの省略など、映像化に合わせた改変があるようです。

予告編

感想

一見するとおもちゃ箱をひっくり返したような、時間軸、ノンフィクション、フィクションが混在するぐちゃぐちゃな映像のパーツが一つの塊になっていて混乱する。が、一つ一つのパーツすべてに無駄なものが存在しない。このパーツを一つ一つ丁寧に組み合わせると最後には一冊の本が完成する。この完成した瞬間が気持ちいい。

最初観ようと思ったときはあらすじを読み違えていて、「小説書いたらその内容が現実になっていって大変なことになっちゃった」という話かと思っていたら全然違って「ん?」となりました。しかしながら、逆にそれがよかったのか楽しめました。

キャッチコピーにもあるとおり、本作の中でどこが現実でどこが小説かというところはストーリーの肝となっている部分です。この現実か小説かという境界線をうまく隠すように、時間軸がばらばらに配置されています。ここが混乱するポイントではあるのですが、きちんと最後には時間軸が整理されてわかるようになっています。この最後の整理される瞬間がとにかく気持ちがいい。そしてこの整理された時間軸から、映画全体を振り返ってみると、一つとして無駄なシーンが存在しないんですよね。ここがまた気持ちがいい。テトリスで長い棒を入れて、全部消えたときぐらいの快感があります。

登場人物のなかで津田伸一(藤原竜也)は小説と現実の境界を知っている作者サイドで、鳥飼なほみ(土屋太鳳)は何もわからない視聴者サイドの役柄なのかなと思います。実際に作中でも鳥飼なほみは現実がどうか検証しに行くシーンもあります。嘘をつくときのよくある手法として「適度に真実を混ぜる」というのがありますが、作中で津田伸一が語るのは、「真実+人物の癖などから予測される行動+真実」というような構造の話になっているため、映像中で真実を検証していてもどこまでが小説かわかりづらく見せています。

そもそもなぜこの出来事を小説にしようと思ったのか、という部分についてもきちんと語られています。ただ単に面白い出来事だからではなく、そこには津田伸一の小説家としての思いが感じられます。小説家である自分だからできること、小説だからできることそういう思いで書いたのかなと、まるで実在の人物のように感じ取れました。

キャスト陣も全員ハマり役で違和感なく楽しめました。ストーリーも大変魅力的ですが、アダルトチックな映像表現も多いので、小さなお子さんと一緒に観るのはお勧めできないかなぁと思います。Netflix等の各種は新サービスで配信中なので、気になった方はぜひ観てみてください。

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