【映画感想】「西部戦線異状なし(2022)」

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本作はエーリヒ・マリア・レマルクによる1929年の同名小説を原作とした作品で、1930年と1979年にも映像化されています。曖昧さ回避のため、今回はタイトルに公開年を記載しています。

タイトルの通り、舞台は第一次世界大戦の西部戦線です。西部戦線とは、ドイツとイギリス・フランスをはじめとする連合国の戦いで、ベルギー南部からフランス北東部にかけて戦線が構築されていました。この戦線の様子をドイツの志願兵であるパウル・ボイメルの視点で描いています。

予告編

感想

この作品を観て戦争なんてしてはいけない、改めてそう思いました。

主人公たちは、戦争に行って自分たちは英雄になるんだ、と意気揚々と前線へ行きますが、そこで目の当たりにした現実に打ちひしがれます。出発前の輝かしい場面と戦場の死や痛み、不安、恐怖などがあふれた場面との対比が戦争の異状さをより引き立てています。

作品全体としては、2つの場面に分けられます。前述した場面は主人公たちが戦場に行ったばかり(前半)のときで、もう一つの場面はそこから18か月後の休戦間近の場面(後半)となってます。後半部分はわりかし平和なようにも見えますが、お話が進むにつれて前半と変わらず異状であることが分かってきます。

後半では、前線の兵士たちと司令部との対比が特に目を見張ります。無茶な命令にも従うしかない兵士たちと安全圏から無茶な命令を出し続ける司令部、そして生活レベルの差もひどいものです。これを異状と言わずしてなんといえばいいのかという感じです。唯一の良心として代表団の人たちは前線で大量の兵士が死にまくっている、これ以上やっても死人を増やすだけだ、と休戦協定への働きかけをしています。

最後にこの西部戦線での戦果が綴られています。作品全体を通してですが、どれだけ戦争が無益であるかということに対して焦点を当てているように感じました。また、戦場において一人の兵士の思いや葛藤などは記録にも残らないというような異状性も描いているのではないのかなと思います。