【映画感想】「ベルファスト」

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2022年公開。監督は「オリエント急行殺人事件(2017)」、「ナイル殺人事件(2022)」のケネス・ブラナー、主演はジュード・ヒルで本作が初めての長編映像作品出演となっています。第94回アカデミー賞では脚本賞を受賞しています。

本作は1969年のベルファスト(北アイルランド)が舞台になっています。また、監督であるケネス・ブラナーの半自伝的な作品となっています。

1969年ごろの北アイルランドでは領有を巡り、イギリスとアイルランドが対立していた「北アイルランド問題」の最中です。紛争などは起こっていなかったようですが、テロなどの暴力行為が頻発しており不安定な時代だったようです。

予告編

感想

故郷って何だろう?家族って何だろう?コミュニティーって何だろう?そんないままで当たり前だと思っていた繋がりを改めて考えさせられました。主人公の少年に監督自身の過去を重ね合わせることで、あの頃のベルファストへ帰郷する物語のように感じられました。故郷への愛が作品から溢れ出ており、故郷、家族そしてベルファストにいた人々への感謝が伝わってきました。

本作品は今時の映画としては珍しく、映像の98%ぐらいが白黒映像となっています。白黒映像と聞くと、表現が淡白なのでは?と思いがちですが、本作は全然違います。色がないのにどこかキラキラ輝いているような感覚や温かみを感じます。この作品において現代はカラー、過去は白黒という分け方が基本になっており、主人公である9歳の少年がその当時間違いなく感じていたであろうキラキラ輝いている世界がなぜか色もないのに再現されています。これはまさに演技や撮影手法など様々な要因が重なり合って生まれたすばらしいものだと思います。
先ほどの色の分け方を説明しましたが、過去の中でも唯一カラーになっているのが映画館で映画を観るシーンです。ここの映画の映像だけカラーになっていて、主人公が感じるものの中で特に輝いていた、憧れていたのが映画館で観る映画なんだろうなぁと伝わってきました。

冒頭に北アイルランド問題について簡単に書きました。本作品ではこの中でキリスト教のカトリック派とプロテスタント派の対立が描かれています。そんないつ攻撃に巻き込まれるか分からない状況で懸命に明るく生きていく家族たちの強さを感じました。この強さの根底には、家族や故郷などから切り離されたくない、そんな強い思いがあったのだと思います。様々なつながりの分断や対立が描かれていますが、本作の最後で主人公に父親が語り掛けるシーンでの父親のセリフは胸にグッときました。どんなセリフかは、ぜひ本編をチェックしていただきたいです。このセリフの精神があれば皆平和に暮らせると思います。

時代設定はつらいものですが、子供目線から見た輝いている暖かい世界が映像から感じ取れる多幸感満載の作品です。子供のころに感じてたあの思いを追体験したい方にお勧めです。

ベルファスト(字幕版)
ベルファスト(吹替版)